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前回(遺言書シリーズ1回目)では、遺言書の種類、メリットデメリット、自筆証書遺言保管制度(法務局での遺言書預かりサービス)の概要、メリット、預け方を記載しました。

 

今回は、遺言書といえばコレでしょう、と誰もがイメージする遺言書、自筆証書遺言について、イザとなって遺言書を使用する場面になった場合でトラブルにならないために(主に不動産登記の観点から)作成の注意点や実際にあったトラブルなどを紹介したいと思います。

 

前回のおさらいですが、自筆証書遺言というのは「自分の財産を自分の死後、誰に渡すかを自分で文章にしておくもの」です。他の遺言書では、公正証書遺言がありましたね。それぞれのメリット、デメリットは前回(遺言書シリーズ1回目)をご覧ください。

 

さて、自筆証書遺言には、「コレが書いてないと、そもそも遺言書自体が無効になるよ」という要件があります。コレが無いと、内容がしっかりとしていても遺言書が成立していないとなります。

 

Ⅰ.自筆証書遺言の成立要件

 

さて、自筆証書遺言を定めた民法968条には次のように書いてあります。

民法968条

1.自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

2.前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全文又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

3.自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

 

つまり、どういうことかというと

 

①全文自書(ただし、財産目録については自署でなくてもOK)

②遺言書の作成日付を自書

③(遺言者の)氏名を自書

④印鑑を押す

⑤遺言書に書き加えたり、削除(変更)した場合には、訂正場所を示して訂正印を押す。

 

要件としてはこれだけです。

 

よく言われる注意点は、

1.日付は月日まできちんと実際の日付で書く

→7月吉日と書いて無効とされた判例があります。他にも、年月日を書かず他のコトを書いて、有効になった判例、無効になった判例イロイロありますが、令和●年●月●日と書けばよいだけですので、冒険はせず、きちんと記載しましょう。

 

2.印鑑を押す。

→印鑑は認印、実印何でもよいです。

 

ともあれ、さきほどの5つの要件を満たせば遺言書としては成立します。

 

 

 

Ⅱ.遺言書が成立しても、使えない場合がある?(内容のミス)

 

しかし、要件をギリギリで突破している遺言書があったとして、有効なのですが、実際に不動産の名義を変えようと法務局に持っていったら追加の書類を出せ、(もしくは、遺言書と別に相続人全員から実印付きの同意書を出せ)といわれるコトがあります。(結構あります。)

内容が不明確なため、法務局としても遺言書だけでOKがだせない、といったことが多いのです。

 

実際によくあり、法務局から指摘を受けることが多い事例(の一部を紹介)では、

 

①不動産の所在が違う

②遺言者の「氏名」はあるのもの「住所」の記載がない

③不動産をあげる人(相続する人)の「名前」しか記載がない。

などなど。

 

①不動産の所在が違う

皆さんが「住所」と聞いて、ふつうは「住んでいる場所」を指すものと考えますよね。

では、「住所」がその「土地」を指しているモノ、と考えていませんか?

何を言っているのかといわれそうですが、「住所」=「土地」ではありません。土地には、「所在」という別の特定方法があります。

例えば、「名古屋市東区東桜一丁目3番7号」という「住所」があったとして、その「住所」がある「土地」の「所在」は「名古屋市東区東桜一丁目306番地」です。

たいていの地域では、土地の所在と住所は同じになりますが、住所と土地の所在は定める機関が違い、同じにする必要性も無いため、遺言書に書いた不動産の所在がそこの住所地になっているなど、正確な記載でなくなってしまっているものがあったりします。

こうなると、住所地と所在を書き間違えたコトを法務局に証明しなければならないのですが、そんな証明、できないので、相続人全員から実印付きの書類を貰ってきてなど、法務局でプラスの書類を要求されるコトとなります。

(相続で「もめている」場合、相続人全員が素直に実印なんて押してくれるわけがないですよね。せっかく遺言書があっても、活用できない事例となってしまいます)

 

②遺言者の「氏名」はあるのもの「住所」の記載がない

法律には、氏名を書け、としか無いので氏名さえあれば大丈夫、、なのですが、登記簿上、(民法上?)人の特定は、「住所(若しくは居所)+氏名」で特定することになっています。なので、「氏名」しかない場合、その不動産を持っている人と、遺言書を書いた人って同じ人なの?という指摘がはいることがあります。

  なので、「氏名」だけでなく「住所」も遺言書に記載しておくとよいです。

 

③不動産をあげる人(相続する人)の「氏名」しかない

「●市●丁目●番地の土地を山田太郎に相続させる」という遺言書があったとします。

②と同じような問題ですが、「山田太郎」ってどこの山田太郎なのですか?ということになります。遺言書書いた人からすれば、「子供に決まってるだろう!」となる(一般常識的には、そう考えるのがスジでしょうが)、遺言書を書いた方の生前の意思を知らない役所からすれば何処の誰だかわからん、となります。この場合、「長男」とか「二男」など、相続人の子供であれば、続柄を指定することで人の特定が可能になります。(もちろん、②と同じく、住所でも可能です)

 

 

他にもイロイロあるのですが、自筆証書遺言を持ってこられて、「登記すんなりできるかな、、」と不安になるモノで結構多いのが、上の3つです。

遺言書の内容を書く場合には、「身内ならわかるでしょう」という観点ではなくて、「全く知らない人が遺言書を読んでも、貰う人、貰うモノ(預金や不動産など)を特定できる」遺言書を作成する必要があります。

「自宅を山田太郎にあげる」なんて遺言書を書いても、「自宅」ってどこだよ!山田太郎って誰だよ!と法務局からすれば思うわけですよ。

 

Ⅲ.財産目録は手書きでなくてもOK!

 

さて、最後に、遺言書が成立する要件で、「ただし、財産目録については自署でなくてもOK」とありました。

財産目録とは、「あげるモノ」のことです。現金、預貯金、株、不動産などなど。

2020年の民法改正で新しくできた文言なのですが、どういう立法趣旨なのか、不勉強で知らないのです。が、たぶん、財産が多い人など、全部手書きは大変、ミスも起こりやすい、などの点からの改正かな、と思っております。

この財産目録は、何もワープロ打ちで作らなくても大丈夫です。例えば、

 

・預金通帳(口座番号などわかるように)をコピーする

・法務局で不動産の謄本を取得して、そのまま財産目録にする

 

といったことも可能です。ただし、通帳のコピーや謄本には、必ず遺言者の氏名を署名し、印鑑を押す必要があります。

 

でも、こちらのほうが、ミスは少なくなると思います。(法務局で貰ってくる謄本を間違えないようにはしてくださいネ。固定資産税の納税通知(毎年市町村役所から送られてくる、固定資産税払ってね、っていうヤツ)や、市町村役所で「名寄せ」を事前に貰って来るなど、自分の持っている不動産をチェックした上で謄本を取られるのが良いかもしれません。

また、すべての財産を一人に相続させるならば、ミスを少なくするため「すべての財産を長男山田太郎に相続させる」と一文だけ載せるのもアリです。

 

自分では「完璧!」と思っていても、イザ相続になって法務局に持っていったら「ダメですねー」と言われるコトも。ならば、専門家に任せてみるのも手ではないでしょうか。

当事務所でも、遺言書の作成についてのご依頼、ご相談を受け付けております。

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